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減価償却費を計上していない決算書の是非について

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減価償却費を計上していない決算書の是非について

減価償却費が計上されていない決算書 これは是か?非か?

会社の決算書を見ていると法人で建物等の資産を持っているにも関わらず
減価償却費を計上していない決算書をお見受けするときがあります。

社長にその理由を伺うと顧問税理士の言うがままに申告納税しているので
特に疑問に感じる事なくその点については全く意識がない様子です。

さてさてこの減価償却費が計上されていない決算書ですが
是か非か?皆さんは如何思われますか?

そもそも減価償却費とは?

減価償却費とは固定資産の耐用年数に応じてその資産の価値が
減少することを反映した費用です。
減価償却費は、企業の利益や純資産に影響を与えるとても重要な項目です。
また減価償却費はキャッシュの動きを伴わない経費であるためPLの利益は
マイナス要因となりますがキャッシュの残高には影響を及ぼしません。

税務と会計の違い

税務と会計と言う言葉。会社の数字を語るうえでよく出てくる言葉ですが
その言葉の意味や考え方の根幹についてご存じでしょうか?


税務と会計は、実はそれぞれ異なる目的を持っています。
税務は会社が納めるべき税金を計算することを目的としています。
会計は会社の経営成績や財政状況をまとめることを目的としています。

税務では、課税対象となる収益は「益金」費用は「損金」と呼ばれます。
益金から損金を差し引いたものが「所得」となります。
所得に対して税率をかけることで税金が決まります。

会計では、収益から費用を差し引いたものが「利益」と呼ばれます。
利益には、営業利益や経常利益などの種類があります。
利益は会社の財務諸表に反映されます。

税務と会計の考え方を大雑把な言い方で表すと

税務→儲けを過少に計上してはならない
会計→儲けを過大に計上してはいけない

そしてそれぞれ考え方の根底には

税務→課税の公平性の確保
会計→債権者や株主等の安全確保

があるのです。

税務処理と会計処理の違い 具体例

例えば冒頭の減価償却の例でいえば会計上の減価償却については「実態に則した使用年数」
で計算して費用を計上すると考えられています。会社がその償却資産を何年使うつもりで
購入したのかにより現実に即した減価償却期間を設定するというものです。

一方税務上でそのような取扱いをしてしまうと同じような償却資産を保有している企業間で
計上する減価償却費に大きな差が出てしまい公正な課税ができません。
そこで税務上は償却資産の種類や用途に応じて償却期間があらかじめ決められています。
これを「法定耐用年数」といい税務上の減価償却費は法定耐用年数で減価償却していきます。
さらに税務では一定のルールに従って計算した減価償却限度額内であれば自由に計上する事が
できます。極論その事業年度は減価償却費を計上しないという選択も認められています。

つまり冒頭紹介した減価償却費が計上されていない決算書は


税務申告上はなんら問題ない決算書であると言えます。

銀行の視点

では銀行から融資を受けたいと思って決算書を提示した時
減価償却費が計上されていない会社の決算書をどのように見るか?

結論から申し上げると税務上問題ないとはいえ


印象は非常に良くないです。

なぜなら銀行は債権者の立場として会社を見ているので経費少なくして利益を
過大に計上する事に対してはとても神経質です。銀行が重視するのはやはり
本業の儲けであって税法上認められているとは言え利益を最終黒字にする意図で
減価償却費に一貫性のないサジ加減を加えるのは受け入れがたいのです。

過去の実例ですが私が現役銀行員時代に減価償却費を計上していない会社の
融資の事前審査で減価償却費計上がなされていない事が判明した時点で問答無用
で即座にNGとなったケースがあります。

まとめ

「減価償却費を計上しない」は確かに税務上全く問題ありません。
しかしながら継続的な銀行融資を受ける前提で会社運営をされるのであれば
必ず毎期減価償却費の計上をすることをお勧めします。

税務と会計は似て全く非なるものです。
税務OKであってもその会社に関わる立場が変われば考え方が全く違う
と言う事をご理解頂けたでしょうか?

減価償却費の計上だけではなく会社の決算数値がどのように成り立っているのか?
他人の言いうがママを鵜呑みにするのではなく社長自身でその意味をよく理解
しておかないと知らないうちに不利益被ってましたになりかねませんのでご注意を!



PS
逆パターンで税務に即した法定対応年数より短い期間で減価償却費を
計上したい場合は「税効果会計」という処理が必要なります。
これについてはまた別途ブログで書きたいと思っております。

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