資金調達 銀行との付き合い方

中小企業こそ自らの情報発信が大事だ!

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中小企業こそ自らの情報発信が大事だ!

ある顧問先での出来事

以前の顧問先での出来事です。
ある取引がないメガバンクの
担当者からその社長宛にテレアポで
面談の申し入れがあり、面談の運びとなり
私も同席することになりました。


当時は東日本大震災後の影響で
業績が落ち込む企業が多く、
そのため公的な緊急支援として
売上減少企業に対する融資制度が
設けられていた時期でした。


面談の冒頭、そのメガバンク担当から
その制度融資の説明があり、売上減少であれば
是非その制度を活用してはどうか?
という提案がありました。


同席した私から顧問先の業績状況については
前年対比増収増益なので残念ながら
その制度融資の対象には当てはまりませんと
補足説明をさせて頂きました。


そうするとその担当者はなんとも残念な顔をして、
「それでは仕方ないですね・・」と一言残して、
早々に退散してしまいました。


私からすればその時分に増収増益の
会社なら別の資金ニーズのヒアリングでも
あるのでは?と思っていたのですが、
あまりに拍子抜けの対応に苦笑いするしかなかった。
という記憶が鮮明に残っています。


このエピソードは銀行というのは
自分の売り込みたいモノをお客に
売り込むの事のみに熱心で、会社の事は
殆ど見ようとしない事がとても多い事を
顕著に表しています。

黒字の決算書を出して一安心の時代はもうおしまい。

昨年の5月から銀行を指導監督する
金融庁の方針が大きく変わったのをご存知でしょうか?
(上記写真は2019年5月8日 日経より)


銀行が正常な融資先であっても引当金を積む可能性あり! 


引当金とは将来発生すると見込まれる
特定の費用や損失に備えるため
あらかじめ当期の費用として繰り入れて
準備しておく見積もり金額のこと。


例えばある売先からの代金回収が
危うくなったりした場合に
備え損失を見積もる事です。


つまり将来損をしそうだから
事前に利益から差っ引いて準備する
意味合いがあります。


上記に記事によれば仮にある融資先が
過去の延滞もなく財務状況も黒字の状態で
正常先であっても将来の経済環境の激変で
経営リスクにさらされる可能性が高いと判断されると
引当金を計上しますよ!という事です。


具体的には人口減少傾向が
著しい地域の店舗型の小売り店


技術革新で電気自動車が主流となった際の
ガソリンエンジンメーカー等


その会社を取り巻く経済環境の変化リスク
をよく見なさいという事です。


上記には記載されていませんが
後継者不在とか経営層の高齢化 なども
経営環境の変化以上に勘案される事項です。

当たり前と言えば当たり前の話ではありますが、
今までの銀行の企業評価のやり方は
過去の実績主義と担保主義で 財務諸表と
返済実績や融資残高に見合う担保に問題なければ
正常先という判断してたわけです。 


しかし昨年からそのような評価手法の基準
となる金融庁が銀行を監督するための
金融検査マニュアルが廃止されてその代わりに
ディスカッションペーパーという指針に基づき
管理監督されるようになります。


そのディスカッションペーパーのなかに
上記記事のような企業を取り巻く経済環境の
変化リスクを良く見る!
の考え方が盛り込まれています。

社長さん
コレから銀行は人員削減になってしまうし・・
そういえば最近昔に比べて銀行の人が来る回数が減ってますね。
 その通りで銀行と企業の接点は昔に比べて格段に少なくなっています。
しんぱち先生

社長さん
よく新聞で銀行が担保とか保証に依存しない
事業性の評価をする!と書いてありますが現実のところどうなんですか?
 現実問題として銀行が個々の取引先を隅々まで見ている余裕は現場にはないです。
しんぱち先生
社長さん
現実は厳しいですね!これから中小企業のお金の調達はどうしたらいいですか?

自分から発信しなければ絶対に相手に伝わらない

IRという言葉を聞いた事があると思います。
IRとはインベスター・リレーションズ
(英語: Investor Relations, IR)の略称で
企業が主に投資家に向けて経営状況や財務状況や
業績動向を発信する活動を言います。


株式を上場している所謂、上場会社は
都度IR活動を行い会社の状況がわかるように
常に会社の状況をオープンにしています。
IR活動の目的は自社の状況をオープンにして
主に投資家からの資金を呼び込みやすくすることです。



このようなIR活動ですが株主=経営者が
殆どであるような中小零細企業には
無縁なものだと思っていないでしょうか?
確かに株主=経営者であれば会社の状況に
ついて説明する必要などありません。


もう一つエピソードをご紹介します。
その会社は非常に資金繰りが厳しく
資金ショート寸前の会社の話です。



相談を初めて受けたときは既存の取引銀行からは
追加融資を断られ顧問税理士にも業務の範囲外と
ソッポを向かれ途方に暮れていた状態でした。



銀行からの即資金調達がままならない状態でしたので
月末の資金繰りは様々な支払いを遅らせる事や
大口売掛先からの入金を早めてもらう事で
最悪の資金ショートだけは避けることはできましたが
資金繰りがタイトである事は変わりない状況は続きました。


そこで資金繰りの改善の為に


社内の 無駄なコストの大幅見直し
未収の早期回収
原価管理の見直し
営業担当任せの安易な値引きの根絶



等々を実施しました。


上記を施策を行うと共に銀行との
関係構築の為に行ったのがIR活動です。
ただIRとはいっても上場企業のそれとは
趣が全く違います。


やってもらったのは毎月試算表が完成する毎に
売上・利益が前期対比どうだったのか?
その要因はどうなのか?
そして翌月以降はどうなるのか?
あるいはどうしようと思っているのか?

これをA4ペーパー1枚に纏めて必ず既存取引銀行の
融資の責任者にアポイントを取って面談をしました。
面談時間はせいぜい30分位。A4のペーパーと試算表を
セットで毎回お渡ししていました。



そんな中小零細企業版IR活動を継続して
6カ月位経過した時でしょうか。
ある既存取引銀行から突然支店長が
是非面談したいという連絡がありました。


今まで社長がせいぜい面談していたのは
銀行の担当者か課長レベルです。
支店長から面談したいというような事は
その銀行と取引開始以来初の事です。


社長は少し緊張した面持ちで支店長との
面談に臨んだわけですがその面談で先方の支店長から
毎月提出しているA4のペーパーがとても解かり易く
信頼できる内容なので是非ウチで新規資金を借りて欲しい
という申し出がありました。


その時期その会社の業績はようやく単年での利益が
確保できるようになってきたものの累損解消には
道半ばの状態でした。それにも拘わらず短期資金ながら
無担保融資を支店長から提案頂いたのは大変な驚きでした。



このエピソードは中小零細企業といえども
自分の会社の状況を自ら発信していくことが
如何に大事で資金調達のうえでも非常に重要な
ポイントになるという事を表してします。

中小零細企業は会社の数字だけで
見ていては判断できないような潜在的な強みや
将来性を秘めている場合があります。


銀行の人員削減に伴いそれらを見てもらえる機会が
これから少なくなるというのは中小零細企業に資金調達の
間口を狭める事につながり死活問題です。

繰り返しになりますが、社長の会社の為に銀行が
中小零細企業の事を詳しく掘り下げて見てくれる
というわけじゃありません。


いくら会社に潜在的な将来性があっても相手に
伝わらないと全く意味がないわけです。
見てもらえないなら自らが発信するしかありません。


IR活動は上場会社だけがやるべきものではありません。
資金調達を円滑に行うためには中小零細企業だからこそ
自分の会社の事を発信していくために社長自身が率先して
IR活動を行うべきなのです。

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